十勝の大地にポツンとある廃線の駅は、幸せを願う人が後を絶たないパワースポットだった

text&photo/ 原大介(ユアンワークス)

 

ここ北海道では、鉄道交通を支えるJR北海道の経営難や路線縮小に関連する話が、テレビや新聞で取り上げられる日は少なくありません。

しかし廃線の歴史というのは実に長く、北海道ではJRが1987年に国から鉄道事業を引き継ぐ前から、多くの路線が廃線になっています。

その大きな理由の一つは、北海道の鉄道の歴史が、石炭など天然資源開発とセットになって発展してきためです。石炭から石油へのエネルギー政策の転換以前から、炭鉱の縮小や閉鎖に合わせて鉄道網が廃止・縮小しています。また「自動車時代」の到来も、鉄道に大きな影響を与えてきました。

といきなり固い話から始まりましたが、十勝にも廃線になった路線がいくつか存在します。そのひとつが広尾線。帯広駅で根室本線から分岐し、十勝平野を南下して広尾郡広尾町の広尾駅に至る路線で1929年に開通。1987年に廃線になっています。

広尾にあった駅の一つが「幸福駅」。敗戦後は帯広市が「交通公園」として整備してきました。「幸福」というその名前、また「とかち帯広空港」からほど近いこともあり、近年ここを訪れる外国の旅行者が増えています。

写真撮影したくなるような、スポットがたくさん!

いかにも十勝的な風景の中を走っていると、突然現れるのが「幸福交通公園」。帯広市街地から国道236号で南に約30分。ここから「とかち帯広空港」までは車で約8分ほど。駐車場も広く、レンタカーやバイクだけでなく、観光バスも乗りつけます。

 

西側はこんな風景。奥に日高山脈。冬には一面真っ白に。積もった雪の上に倒れ込み写真を撮る人も多いそう。

 

広尾線を走っていた電車(正確にはディーセルカー)が2両置かれています。緑とオレンジのコントラストが美しい。中に入れちゃいますよ。

 

奥に駅舎。手前には鐘。この駅舎は。2013年に耐震補強のため、「古くて新しい」をコンセプトに改築されました。

 

ホームにあがり車両の方へ。実はここ「恋人の聖地」。「幸福駅」と二つ隣の「愛国駅」で切符を買うと幸せと愛が訪れる縁起がいい場所です。1973年にテレビ番組で「愛の国から幸福へ」というキャッチフレーズで紹介されたのをきっかけに、愛国から幸福行きの切符が一大ブームとなったそう。今では道外のみならず海外からもカップルがきて、年間数十組もここで結婚セレモニーが行なわれています。

 

運転席。電車に足を踏み入れると懐かしい匂いがします。「そうそう、昔の電車ってこういう匂いだった!」と子どものころを思い出しました。

 

背もたれが直角の固い4人掛けシート。なつかしい…。ここも写真撮影におすすめ。

 

駅舎に向かいます。外に貼ってあるのは大きな切符。訪れた人は売店でこの切符を買い、それぞれの願いを書いて駅舎に貼ります。一歩足を踏み入れると…

 

どーん!!ところ狭しと貼られた切符。圧巻!!鳥肌が立ちます。人の願いがこれでもかというほど濃密に詰まった空間です。

 

近くでみるとこんな感じ。「愛国から幸福ゆき」と印字されていて、その周りにメッセージ。家族の健康、恋愛成就、受験合格、世界平和などさまざまな願いが書かれています。中にはかなり現金なものも(笑)

 

昔ながらの売店をのぞいてみると…

駅舎を抜けて外に出ると、売店があります。

 

今日の日付というのが嬉しいですね。

 

箸やTシャツから手ぬぐいまで、幸福グッズがなんでもありです(笑)

 

木製の通行手形や提灯型のキーホルダーも。ちなみに通行手形は多くの日本の観光地でお馴染みです。調べてみたらお土産用に昭和47年に誕生したそう。案外歴史が浅くてびっくり。石川県にある有限会社オキというところがたくさん作っているそう。

 

紙ハガキ、ストラップ、なんでもござれ状態。ちなみ幸福駅をテーマにした昭和歌謡が流れておりました。1974年に発売された芹洋子さんの『愛の国から幸福へ』。こんな歌詞です。

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幸福行きを 二枚下さい
今度の汽車で 出発します
別々に生まれて 育った二人が
不思議な出合いで 結ばれた
愛の荷物は 分けて持ちましょう
各駅停車の 旅だから

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きっと、駆け落ちですな。

 

8年8月8日の日付が入った切符方のハガキも売られています。日本では数字の「8」が縁起がいいとされています。感じで書くと「八」。末広がりといって、物事が広がり発展していくニュアンスを持っています。

 

2017年5月に、「幸福村」が新たに誕生!

元々車両や、駅舎、お土産物屋だけだった「幸福交通公園」ですが、昨年5月にはドリンクやアイスクリームを販売する「幸福村」が敷地内に誕生。今年から十勝らしい食材を使ったフードも提供しています。

 

こちらがメニュー。十勝のベーコン、ウィンター、ポテト、野菜の上にとろりとしたラクレットチーズをかけた『幸せラクレット』なんて、とても美味しそう!!『十勝小麦の幸せパンケーキ』も気になります。

 

日本らしいスイーツを食べたい人には、こちらの「幸せ大福」がおすすめ。十勝の小豆をやわらかなお餅が包みます。2個入430円。

 

右が村長のなおみさん。左は村長の旦那さんのじゅんいちさん。おふたりがあたたかく出向かえてくれますよ。幸福村は「幸福駅から広がる幸せ」をコンセプトにしていて、幸福駅での結婚式を取り仕切っているののも村長なのです。ほかに受験シーズンには幸福駅から合格祈願グッズが届くようなこともされています。InstagramFacebookでも情報発信しているので要フォロー&チェック!

 

これを見て「懐かしい!」という人は年齢がばれますね(笑) むかし駅弁と一緒に売っていたお茶の入れ物。まだペットボトルがなかった時代。久しぶりにみました。さすが「幸福駅」だけあって、こういうものまで用意しているんですね。心がくすぐられます。

 

「幸福村」の店内でも様々なグッズが販売されていますが、フェアトレードのものだったり、自分たちで焙煎したコーヒー豆だったり、人の幸せにつながるようなグッズが並びます。

 

願い旗を用意してくれているので、駅舎だけでなく、こちらにも願いを残していきましょう。

 

こちらでソフトクリームを買ったのですが、食い意地が張って写真を撮るのを忘れてしまいました。お店の外にある置物を使って、撮りたかった写真に近づけてみました(笑)

 

この世に生まれた以上、どうせなら幸せになりたい。それはごく自然な想いですよね。ここはたまたま「幸福」という名の駅だったので、それが理由で観光地になっていますが、これだけ多くの人が訪れて、幸せへの願いや祈りを残していっていることを考えると、もうただの観光地ではないように感じてしまいます。ぜひ足を運んでみてください。

 


○施設名/幸福駅(幸福交通公園)
○問合せ/0155-22-8600(帯広観光コンベンション協会)
○住所/帯広市幸福町東1線161
○営業時間/通年観光可能
○アクセス/十勝バス「広尾」行き「幸福」下車、徒歩約5分
○HP/http://obikan.jp/post_spot/1491/

LOCATION

WRITER

原 大介
ライター/ディレクター

リクルートグループの制作会社で12年勤務した後、2012年に独立。現在は「北海道じゃらん」の編集・取材も担当。もう一つの仕事であるコンサル業務と合わせて、道内のあちこちを飛び回る日々。

ユアンワークス
http://yuanworks.info/