十勝の大地で迷子になったらたどり着いた、ファンタジーのような不思議な公園

text&photo/ 原大介(ユアンワークス)

北海道のなかでも、別国のような異彩を放っているのが「十勝」。

札幌から日高山脈を越え、目の前に十勝の大地が広がると、変な話だけど北海道の人でも「うわーーー、北海道だ!」と思ってしまうほど。どこまでも続く畑。雄大な大地。流れている時間も時計の針の進み方もどこか違うように思えます。

9月某日、十勝の豊頃町で用事があありました。豊頃町とは十勝川が海に注ぎだすところにある町で、真冬になると海から岸へと打ち上げられる大きな氷が「ジェリーアイス」と呼ばれ、ここ数年注目を浴びています。

その豊頃町から次の用事がある帯広市南部へと向かう時に、ふと思ったのでした。「一度帯広市街地に戻ってから、また南下しなくても、このまま西へ向かえば目的地に行けるのでは??」と。しかし車のカーナビは故障中。スマホはカバンに入れたままだし、取り出してGoogle Mapで確認するのもなんだかめんどくさい。

まあいいや、きっと行けるはず、時間もあるし天気もいいしのんびりドライブしていこう。そんな具合で車を途中で西の方へと走らせたのでした。

 

圧倒的な畑の風景。十勝・十勝・十勝!

起伏がなくだだっ広いと思っていた十勝でしたが坂があり、くねくねとあがると、台地になっているところにでました。といってもそこにもまた畑が遠くまで広がっています。

「あれ、こっちの方向でいいんだっけ、なんかちょっと方角ちがうかも」と何度か交差点を曲がっているうちに、なーんと迷子に!

 

そろそろスマホを出して位置を確認しようかと思った矢先、耳慣れぬ公園が出現。ちょうどいい、駐車場に車を止めようと公園の中へ。せっかくだから車を降りて公園散策を始めると、なんとも不思議な建築物に会ったのでした。

青い空と木々の緑に包まれて、公園の中をてくてく

広い公園。時間は9時30分ごろ。だあれもいません(笑)

 

生命力を感じる木が出現。赤い実をつけているからナナカマドかな?

 

さらに歩を進めると、木の隙間から何か建造物が見えてきます。なんだい、ありゃ!?

 

ほぉ、ここは幕別町なのか!今年の平昌五輪スピードスケート女子で、金メダルを含む計五つのメダルを獲得した高木姉妹の出身地ではないか!? この建造物には名前があって『ピラ・リ』というのか。

ちょっと長くなりますが、看板には以下の内容が書かれていました。

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ピラ・リとは、アイヌ語で「偉大なる崖」という意味で、平成8年に幕別町の開基100年を記念するシンボル施設として建設されました。

この施設は、「幕別の歴史を台地に刻み、自然と共生する」、「幕別の未来を見つめる大地の目」の2点をイメージし、約100人の住民が参加したワークショップ方式により、ゆっくり時間をかけて創られました。

中に入ると、人間が忘れていた大地との関わりを思い起こさせてくれます。曲線上の柱や壁の不思議な空間とモザイクスタイルの調和、そして、光をベースに訪れる人たちを太古へと向かえてくれます。

展望テラスからは、幕別市街や広い農地、日高や大雪の山並みの大パノラマを楽しむことができます。

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ふむふむ。住民でワークショップをやってこんなのを作ってしまうなんて、幕別町すごい!塔の下が坂になっているようだったので、少し下って回りこんでみました。

 

おーーー、なかなかのスケール!塔の下がこんなになってるとは。

 

なんだろう、体が小さくなって巻貝の中に入り込んだような気分です。奥へすすむと…。

 

タイル張りのデザインが、神秘的。とにかく静かでいま世界に自分一人しかいないかも、という妄想が頭をじわじわ占め始めます。

 

苔すらなんだか神々しく思える。

 

塔の真下。差し込む太陽のエネルギーを感じます。

 

展望台を目指し、階段をぐるぐる。

 

入植がはじまる約120年前まで、ここでは太古が続いていたのでは?

展望台からに出ると、すごい眺望!幕別の街が広がっています。120年ほど前にここに人が入植して大地を拓き、街を作り、暮らしを営んできたんだなと、なんだかしみじみしてしまいます。近代へと向かう大きな時代のうねりが人をここに連れてきたのです。そんなことを考えていると、ここに街がなかったころの太古へ意識が引っ張られる気がします。そうか、ここは120年前までは太古の時間が流れていたんだろうな。

 

上の写真より右手側。人の手が入った畑が美しい。

 

塔から降りて右に行くと、リフトがあります。冬には小さいスキー場にでもなるんだろうか。

 

畑に向かって低くなるなだらかな丘。調べてみたらここは「明野ヶ丘スキー場」というそうです。子どものデビューにおすすめのスキー場とのこと。納得!!

 

園内を歩いて駐車場へと戻ります。あいかわらず誰もいない。自分ひとりだけ。

 

9月中旬でしたが、もう紅葉をはじめている木もありました。

 

ちゃんとGoogle MAPに目的地を入力し公園を出てナビゲートしてもらうと、またすぐこのような風景の中に戻ります。奥に見えるのは日高山脈。ああ、やっぱり十勝って圧倒的です!帯広空港を利用して移動しようとしている人は、ぜひあてもない十勝ドライブおすすめします。大きな国道ではなくて、脇道にこそ宝物のような隠れた風景がありますよ。

 


○住所/中川郡幕別町明野496

LOCATION

WRITER

原 大介
ライター/ディレクター

リクルートグループの制作会社で12年勤務した後、2012年に独立。現在は「北海道じゃらん」の編集・取材も担当。もう一つの仕事であるコンサル業務と合わせて、道内のあちこちを飛び回る日々。

ユアンワークス
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