小樽酔いどれ紀行~酒蔵見学からの角打ちで一杯~

text&photo/ 原大介(ユアンワークス)

 

「日本にきたら日本のお酒を飲みたい!」、そんな酒好きの旅人も多いはず。私もとしてもみなさんにぜひ日本酒を飲んでほしい。だって美味しいんですよ!

基本的にお酒というのは原料の糖を微生物である酵母が分解してアルコール(とガス。二酸化炭素ですね)に変えます。例えばワインは葡萄の糖を酵母が分解してできます。ところが!日本酒の米には成分として糖がありません。糖がなければお酒はできません。

ではどうしているのかというと、「麹菌」という微生物の力を借ります。麹菌が米のでんぷん質を分解して糖にするんです。そしてその糖を酵母がアルコールに変える。つまり2段階。しかもこの工程を一気にやってしまう「平行複発酵」という方式が日本酒造りの特徴になっています。麹菌が米を糖に変えるのと、酵母が糖をアルコールに変えるのを同じタンクの中で同時に行うのです。超ざっくり説明するとそういうことになります。

ちなみに炊いたお米を口に含み、ずっともぐもぐやっていると甘くなるのは、唾液に含まれる成分がでんぷんを糖に変えるからです。大昔の日本酒もそのようにつくられていたようですよ。これを「口噛み酒」といいます。とはいっても人がくちゃくちゃしたものから作ったお酒なんも誰も飲みたくないですよね。それは古代の人も同じはず。特にくちゃくちゃするのがおっさんなら。というわけで、このくちゃくちゃするのは神に仕える女の子の役目でした。大ヒットアニメ映画「君の名は。」でもこのシーンが出てきますね。アニメ好きな旅人なら見たことがあるかもしれません。

前置きが長くなりましたが、今回の記事では「日本酒を飲むだけでは飽き足りない!もっと日本酒を知りたい!」、そんな旅人の気持ちを満たす「酒蔵見学」について紹介しちゃいます!

 

札幌駅から電車で約35分
人気の観光地小樽へ

ある週の日曜日。札幌駅発10時13分の電車に乗って小樽へ向かいました。今回の目的地である田中酒造は、1899年(明治32年)の創業。寒造りといって冬にだけ日本酒造りをする蔵が多い中、四季醸造蔵として1年間日本酒を仕込んでいる全国でも珍しい蔵です(なんで冬にだけ日本酒造りをするのかというのは、江戸時代の政治的な理由があったのですがそれはまた別の機会に)。ということはしぼりたてぴちぴちの新鮮な生原酒をどの季節でも楽しめてしまうし、お酒を作っているところも年中見学できちゃいます。代表銘柄は「宝川(たからがわ)」

最寄りの駅の「南小樽駅」から歩いて5分ほどです。しかし!よく調べずに向かった私。「南小樽駅」の先の「小樽駅」まで行ってしまいました(笑)しかしこれが逆に帰ってよかったも。なんせこの日は天気がすごくよく、小樽散策を楽しめました。ちょっと写真で紹介します。

 

札幌より早く町が発展した小樽。てくてく歩いているとあちこちで歴史的建造物に出会います。ここは「旧寿原邸」といい、小樽を代表する実業家だった寿原家の邸宅です。

 

小高い丘の方へ向かうと廃校がありました。旧堺小学校。2006年の閉校です。

 

廃校の隣になんとも気になる坂道。ここを登っていくと…。

 

小樽の町の歴史を見守ってきてた「水天宮(すいてんぐう」に出ました。日本が近代国家へと変貌した明治維新より10年近くも前、江戸時代の安政6年(1859)に祭られたそう。

 

ここは隠れた絶景スポットで、眼下に小樽港が広がります。はっきり言ってこれは見る価値あり!下の小樽運河には旅行者がたくさんいるのに、こちらには誰もいなくて静寂に包まれていました。小樽駅から歩いて20分ほど。

 

いよいよ酒蔵へ突入!
見学無料で年中営業

水天宮でしばらく海や小樽の街を眺めた後、丘を降りていくと小樽運河近くの観光エリアへ。そこを回避しさらに東へ向かいます。

 

ゲストハウスを発見!小樽滞在の基地にいいかもしれません。

 

また坂を上がり、そこから下ると人気ラーメン店「初代」の前へ。もう少し進むとついに酒蔵が現れましした! さすがに雰囲気がありますね。

 

日本酒の原料は水と米と麹。ひとつひとつが味や品質に大きく影響します。蔵の前には地下から湧いた「仕込水」が。まずはこれを一口いただきましょう。水の口当たりとお酒の口当たりには大きく関係があるんですよ。

 

中に入ると廊下があります。空気が変わります。wi-fiも飛んでいました。

 

がらがらと扉を開けてさらに奥へ。お酒やおつまみの販売所になっていて、数人の外国人が試飲コーナーで日本酒を飲んでいましたよ。美味しそう…。しかしまずは酒蔵見学へ

 

見学場所の入り口は2階。これまで日本酒の本で何度も何度も蔵の様子を見てきました。ついにそこに足を踏み入れるんだと思うとお酒を飲んでいるわけではないのに、体が熱くなります。受付などは特にないので、勝手に進んでOKです。

 

さあ、階段を登り切りましたよ。

 

扉を開け廊下を進むと看板が出てきます。

 

ニセコ町の大橋農場さんで、酒米を作っている様子がパネルで紹介されています。原材料であるお米の生産者の顔が見えるのは安心ですね。

 

このように製造場のまわりをぐるりと廊下が取り囲んでおり、そこから覗くようにして製造現場を見学できます。

 

順路は酒造りの工程にそって進んでいきます。それぞれの工程について説明がありますよ。残念ながら日本語だけなので、漢字文化圏からの旅行者の人はなんとなく文字面で想像してください。

 

こちらは蒸したお米に麹菌を繁殖させる工程です。蒸したお米が広がっています。この部屋は「室(むろ」と呼ばれます。日本酒造りの工程の重要さを表すのに「一、麹/ 二、酛(酒母)/三、造り(発酵)」という言葉がありますが、そのくらいこの工程は大切なのです。

 

次は酒母を作る工程。作り始めて7日目らしいです。酒母は「酛(もと)」とも言います。糖をアルコールにかえる「酵母」を大量に培養する工程です。米・麹・水が材料で、そこに酵母を入れて増やしていきます。いまは日本醸造協会が頒布している酵母を使う蔵が多いですが、元々は蔵に住み着いていた酵母がこの中に自然に入って増殖していたようです。

 

こちらは「醪(もろみ)」と呼ばれ、酒母・麹・蒸米・仕込み水をいれて造る発酵中の液体です。仕込んでから9日目だそうです。よく見るとぶくぶく泡が立って発酵中=お酒に変化しているということが分かります。この中でたくさんの微生物が激しく活動しているのだと思うと、そしてそれが僕たちが口にするお酒になるのだと思うとなんとも不思議な気持ちになります。自然の神々しさすら感じますよ!

 

タンクには番号が振ってありました。1つのタンクにつき約4000ℓ。お酒の一升瓶が約1800㎖なので、約2222本分!

 

蔵の中には仕込みが終わったたくさんのお酒も眠っています。梅酒も発見!

 

以上で酒蔵見学は終了。最初の場所に戻ってくると奥に試飲コーナーがあり何種類も飲ませてくれます。同じ蔵で作ったお酒でも、種類によって全然味が違ってびっくり!「あれもこれも」とお店の人にわがままを言っていろいろ飲ませてもらいました(笑)なんと無料です!

 

お酒もたくさん売っているので、試飲をしてお気に入りを見つけたらぜひお土産に。地元以外にあまり出回らず、札幌の居酒屋でも田中酒造の日本酒を飲めるところは多くないのでとても貴重ですよ。

 

ほろ酔い気分で更なるお酒を求め
「酒商たかの」の角打ちへとふーらーふら

試飲でいろいろ飲ませてもらい、ふわふわしてきた私(笑)。小樽に来たら行きたいと思っていたところがありました。それが「酒商たかの」さん。例によってあまり下調べをせずに小樽にきたのですが、偶然にも酒蔵に向う間にお店の前を通りかかりました。そこまで戻ろうと歩き出しましたが…。

なんか、お腹が空いている。俺、お腹空いている。アルコールが胃を刺激したのか…。しかし空き腹にこれ以上の日本酒はまずい。何を食べよう、小樽だし小樽っぽいものを…。とふらふら歩いてこちらへ。

 

都通り商店街のアーケード内にある「中華食堂 桂苑」。観光客だけじゃなくて地元の人もよく利用するお店です。この日も80歳くらいの老夫婦がふたりで美味しそうに料理を食べていました。

 

ここの名物が「あんかけ焼きそば」!どうですかおいしそうでしょ。添えられたマスタードがまたいいですよね。いまでは小樽名物のひとつとなり、市内で80店を超える飲食店が提供をしているあんかけ焼きそばですが、こちらのお店が草分け的存在。ファンが多いのも納得です。他に餃子もいただきましたがこれがまた美味かった!

 

食べ終えてお腹いっぱい…。なんだかもう満足してきちゃって角打ちはいいかなーという気も…(笑)しかしせっかくだからと、今度こそ「酒商たかの」さんへ向かいます。

 

じゃーん、こちらです。並んでいる日本酒のラインナップがすごい!見てるだけで楽しい!ときめく!

 

「角打ち」はここの2階。100種類以上の日本酒がラインナップされているそうです。ずっと来たかったんだよなー。実はここ、札幌にも2つの店舗を構えています。大通駅の近くです。そこには社長の写真が飾られています。札幌のお店には何度も通っていて、いつか本店にとずーーーっと思っていたのでした。

ちなみに「角打ち」の本来の意味は、居酒屋ではなく、小売である酒屋で立ち飲みができるところのこと。どうやら日本酒を買いに来た飲んべえが家に持って帰るのを待てずにお店で飲み始めたのが始まりらしいです。さすが飲んべえ。

お店に入ると奥にいましたよ、たかの社長。ああ、なんと神々しい(笑) お声がけして2階に上がろうとすると「2階は17時からだよ」とのこと。ぎょえーーー、まだ14時30分。何も調べずに行動するからこういうことになるんです。反省です、はい。しかしその後に嬉しい案内が。小樽駅前にもう1店舗あって、そこは14時からやっているらしい。ブラボーーー、ありがとう、社長。あなたは最高です!飲んべえの神です!! ということで小樽駅に向かい再び歩き始めました。

 

小樽駅から徒歩30秒。ほぼ直結。
酒飲みの聖地と認定したいお店

駅のすぐ近くにそんなお店あったけなー、小樽に何度もきてるけど、と思いながら駅のすぐ手前まで。すると…、あるじゃあーりませんか!

 

こちらの店名は「角打ちセンターたかの」。本店よりも札幌の2店舗よりも料理の数が多く、日本酒以外のお酒もたくさん。「5分で入って出てこれる」の看板がいいですね(笑)

 

気軽な感じがたまりません。壁には料理メニューがずらり。ねぎたくあん、味噌にんにくなど、日本ならではの酒のあても。

 

お酒は奥のカウンターで。前払い制です。日本酒もずらり並んでますねー。酒屋が自信をもって並べているラインナップなので間違いなし。好みを伝えるとおすすめを教えてくれます。

 

お酒のあてにはこちらをチョイス。炙りしめ鯖!うまーーーい!目の前でバーナーであぶってくれます。本当はその様子を撮影したかったんだけど、動きが緩慢になっている酔っ払いには無理でした(笑)

 

こうして飲んべえの一日はあっという間に過ぎていきました。小樽には昔ながらの蕎麦屋も多いから最後はそばやでずずっとしめる、というのもありです。

あ、そうそう、田中酒造の酒蔵見学はめっちゃ空いてましたよ。ほんと穴場です。ゆっくり見学したい人におすすめです(観光バスが到着するとわちゃわちゃ混雑するそうですが…)。角打ちセンター高野も早い時間に行ったおかけで、しばらくは僕らの貸切状態でした。外は快晴だったから昼から酒浸りで過ごす人の方が少ないのかもしれません。それでも酒蔵見学をして昼から飲んでグダグダになって。こんな北海道の過ごし方もまた、特別な旅の思い出になるはずです。飲んべえの旅人さんは大きくうなづいてくれるはず。飲んべえじゃなくても「そういうのも、まぁありかな」と思ってくれるはず。そう願って筆をおきます(笑)


【田中酒造/亀甲蔵】
〇電話/0134-21-2390
〇住所/小樽市信香町2-2
〇営業時間/9:00~18:00
〇休/なし

 

【中華食堂 桂苑】
〇電話/0134-23-8155
〇住所/小樽市稲穂2丁目16-14
〇営業時間/11:00~21:00(LO 20:30)
〇休/木
〇P/契約駐車場あり

 

【小樽 酒商たかの】
〇電話/0134-34 -1100
〇住所/小樽市稲穂1丁目1-6
〇営業時間/10 :00~22:00(2階の角打ちは17:00~)
〇休/なし

 

【銘酒 角打ちセンター たかの】
〇電話/0134-34 -1100
〇住所/小樽市稲穂2丁目22
〇営業時間/14 :00~23:00
〇休/不定

 

LOCATION

WRITER

原 大介
ライター/ディレクター

リクルートグループの制作会社で12年勤務した後、2012年に独立。現在は「北海道じゃらん」の編集・取材も担当。もう一つの仕事であるコンサル業務と合わせて、道内のあちこちを飛び回る日々。

ユアンワークス
http://yuanworks.info/