
Text & Photo / 松田 謙介
東京といえば浅草寺、京都といったら貴船神社、和歌山なら弘法大師が開山された高野山は奥の院。あなたの中に「日本といえば」でパッと思いつく寺社があるはず。アジア旅行と寺社巡りはとても相性がよいので、訪れるのがどんな街であれ、少なくともどこか一つの寺社仏閣へ足を向けて、素敵な思い出をつくってほしいものです。
札幌といえばおすすめはどこだろう。北海道神宮は確かに雰囲気抜群です。エゾヤマザクラが咲く参道や、エゾリスが駆け巡る円山原始林、ここでしか食べられない六花亭銘菓の「判官さま」……など、おすすめ要素が盛りだくさん。
でも、まだまだあるんです、素敵なスポットが! 今回は、ちょっとツウな場所を知りたいという人に、札幌市民の間でもなかなかレアな真駒内滝野霊園の魅力をお伝えしたいと思います。
札幌南区の森に広がる、ちょっぴりシュールな霊園
滝野霊園までは、札幌中心部から車で約40分ほど。携帯の地図アプリやレンタカーのナビゲーションですぐに検索可能です。また、地下鉄南北線の真駒内駅からバスも出ており、「墓参バス」や「真102便」で約20分強のアクセス。運転免許を持っていない人でも訪れることができます。
ココは霊園。寺社ではないため「観光客が行ってもいい場所なの?」と思う人もいることでしょう。どうかご安心を。滝野霊園は祈りの場ですが、ルール&マナーを守れば、誰でも拝観が可能です。
入ってすぐに「人頭有翼の獅子像」がお出迎え。
さらに、その先には30以上ものモアイ像が並んでいます……なんだろう、ココは。そう、滝野霊園は「不思議なシュールさ&異国感」が魅力なのです!
世界的建築家・安藤忠雄氏が手がけた「頭大仏殿」がスゴい!
園内で、ぜひ足を向けてほしいのが建築家・安藤忠雄氏が設計・監修した「頭大仏殿(あたまだいぶつでん)」。15万株以上ものラベンダーが植えられた丘の中に、非常に大きな大仏さまが鎮座されています。
手水舎の水の清らかさに、目を見張ります。こちらで身を清めてから拝観しましょう。
参道入口を抜けると「水庭」が目の前に。ここから、自分は非日常の空間に足を踏み入れるのだ。今までのワクワク楽しい気持ちから、すっと心が切り替わります。
その理由は視覚効果だけでなく、聴覚にもあるかもしれません。水面を渡る風が、水のさざめきを生み出す。さわさわと流れる音が響いています。
さらに進むと、香炉からお香が香ってきます。ああ、なんというアジア感。
まだ、大仏さまに至るには早い。次の行程は長さ40メートルのトンネル。ひだのようにつくられたコンクリートの曲線は胎内的な空間を表現しており、ここにも風によってお香が漂っています。徐々に、心が研ぎ澄まされていく。
ついに、滝野霊園の大仏さまへ。高さ13.5メートル、重量1500トンもの巨大な阿弥陀如来さまです。頭上に屋根はなく、その先には空しかありません。安藤氏は頭大仏殿を設計する際に、インドのアジャンタや中国敦煌などの石窟寺院が脳裏に浮かんだ、と語っています。滝野霊園が持つ、えも言われぬ異国感は、この空間設計にあったのか!
人々の祈り、想いがカタチになる。
奉納物には、タイ語、中国語、韓国語など、たくさんの国のメッセージが書かれていました。そう、訪れて改めて分かったのは、滝野霊園が多くの海外旅行者に愛されていること。
さらにフォトジェニック! 「風薫る 祈りの道」を歩こう
春夏秋冬、それぞれのよさがありますが、訪れるのが、ラベンダーの咲く7月(土日祝日)なら「風薫る 祈りの道」へ足を向けてみてください。
中学生以上500円と有料ではありますが、歩く価値アリです。
この道を歩くと、ラベンダーにグッと寄った写真を撮ることができます。
咲き乱れるラベンダーの奥に鎮座される大仏さま。なんともシュールな風景ですが、これぞ滝野霊園、これぞ(ちょっとレアな)北海道という一枚ですよね。
「風薫る 祈りの道」からは道央の名峰・恵庭岳(えにわだけ)の姿も望めます。カラマツの向こうにそびえる恵庭岳。すごく〝イケメン〟な山なんです!
最後に、アジア旅行が大好きな自分のことを少し。今まで訪れた街で忘れられないシーンがあります。ネパール・バクタプルのダルバール広場の朝や、ミャンマー・オールドバガンのサンライズなどなど。そこには、いつも人々の静かな祈りとふわりと香るお香がありました。
滝野霊園もしかり。緑の中に薫る一陣のお香の風。日本の中では歴史の浅い北海道ですが、この大地に安藤忠雄さんという世界を見てきた建築家の血(思い)がコンポジットされることで、開放的だけど特別な〝北海道らしい参拝空間〟が出来上がっているように思えてならないのです。
日本でアジアを感じる。少し不思議な北海道の空間を感じる。真駒内滝野霊園は〝アジア好き〟なあなたにぜひおすすめしたい場所。旅の合間に思い出してもらえたら、とってもうれしいです。
<真駒内滝野霊園>
○住所/札幌市南区滝野2番地
○電話番号/011-592-1223
○開園時間/7時~19時(夏期:4月1日~9月30日)、7時~18時(冬期:7時~18時)
○料金/入場無料、駐車場無料
※「頭大仏」拝観はラベンダー維持協力金として300以上の志納を。「風薫る祈りの道」は中学生以上500円
○公式サイト
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WRITER
釣り雑誌、旅行サイトの編集経験を活かし、北海道の「自然」の姿を受け手に伝えたいと考えるアラフォーライター。釣りや登山をはじめとした外遊び全般が好きなものの、特技はトンボ捕りとかなり地味。