函館の坂の途中に現れるのは、 誰もが恋する小さなホステル

text&photo/ 原大介(ユアンワークス)

 

函館。この言葉だけで胸の中に何かしらの感情が湧き出る人もいるのではないだろうか。そう、この街は日本人にとって少しの(人によってはたくさんの)特別な趣きを感じさせる街なのだ。

北の地にあることも、270年の鎖国の後に日本で一番早く外国に開いた土地であることも、時代の変わり目の最後の戦いがあったことも、独特の地形も、多くの表現者を輩出していることも、全てがその趣きを作る理由だろう。

函館はいまやアジアの中でも有名な街だし、実際多くの外国からの旅行者がここを訪れている。しかし「函館山」や「朝市」や「金森赤レンガ倉庫」や「五稜郭公園」しか知らないのではあまりにもったいない。

この街をゆっくり歩いてみてほしい。きっと歩く度に函館が好きになる。少なくとも僕はそう。そしてそんな時にぴったりの宿がある。それが今回紹介する「SMALL TOWN HOSTEL」だ。

坂の街にふさわしく
坂の真ん中にその宿はある

場所は函館で「西部地区」と言われるエリア。函館の歴史の中でも早い時期から拓かれた土地。函館山に向っていくつもの坂が伸び、歩く途中で振り返ればキラキラと光る海が目に飛び込んでくる。

その坂の一つが「大三坂」。石畳が美しい。地方から奉行所(昔の役場)へ公用でやって来る人たちのため、坂の入口に建てられていた宿の家印に由来するそう。

坂を上がると「大三坂ビルヂング」という生命保険会社の古いビルをリノベーションした建物が現れる。「SMALL TOWN HOSTEL」はそこに併設した古民家に手を入れて、2017年12月にオープン。改装にあたってはクラウドファンディングで400万円を超える支援が集まったそう。

 

入り口。この看板にいきなり心を奪われる。

 

入り口から続く道の向こうに階段。その先に何があるんだろうってそそられる。

 


こちらが「第三坂ビルヂング」をリノベーションした「箱バル不動産」を営む蒲生寛之さん。この宿の管理者でもある。函館の今を語るときに必ず名前がでてくるほどの人なのに、偉ぶるところがなくただただ優しい。

 

今に昔が流れ込んだような
どこか懐かしく居心地のいい空間

早速宿の様子を見ていこう。いちいちキュンとくるから覚悟して(笑)

宿泊している人が利用できる共有スペース。寒くなるこれからの季節は暖炉の炎でぽかぽか。

 

 

タンスの引き出しには地域の店のショップカードなど。宿の中のドアや扉、棚などの建具や家具は、地域の古い建物から引き継いだもの。

 

洗面所。どの空間を覗いてもハッとさせられる。この宿は蒲生さんを中心にプロジェクトに関わる人たちが集まってみんなで作ったそう。プロジェクトメンバーに建築士がいるのも蒲生さんたちの強み。

 

奥へと続く廊下。突き当りにあるドアが「第三坂ビルヂング」につながっている。「あれ、なんでこことここがつながるの??」と空間感覚が狂い、少しだけ迷路の中にいる気分。

 

ところどころに飾られているドライフラワーは、蒲生さんの先輩で花屋「BOTAN」を営んでいる加藤さんの作品。こういう昔からの地元のつながりが、この宿をさらに素敵にしている。ちなみに「BOTAN」も古民家をリノベーションしたお店。

 

ベランダに出て下を覗くとみんなで団らんできそうなスペースが。どこからどうやったらそこに行ける? まるで秘密基地にいるみたいな気分。

 

どうですか?? この宿に恋しませんか? しちゃうでしょ。

 

 

朝ご飯を準備している音が
最高のお目覚めサウンド

事前の予約で朝食も提供してもらえるのだが、これがまたなかなか。布団にくるまってスヤスヤしていると、スタッフが宿にやってくる音で目が覚める。そして何やら朝食を準備している音。母親が朝ご飯を作る音を布団の中できいていた子どもの頃みたいだ。

 

食材のひとつひとつをこのように紹介してくれている。こんなん、期待たかまりますやん!

 

でーん、こちらが朝食。シンプル。最高に美味しい。まずはみそ汁をずずずっ。うまい、しみる。そしてご飯をぱく。よく噛む。甘さが口の中に広がる。はぁ、幸せ。

 

ちなみにこの日に朝ご飯を提供してくれた女性スタッフがなんとも素敵で、思わず恋をするところでした(笑) というのは半分冗談で、勇気を振り絞って話かけてみたところなんとカメラが本職で、SMALL TOWN HOSTELのホームページ写真も撮っているとのこと。関わった人みんなでこうやって宿を守り続けているんだと思うとじんわりしました。

 

いかがでしたか?この空間の中に身を置きたくなりまんか?
宿からはベイエリアまで歩いていけるし、反対に山の方に向えば教会群が現れます。

思わず長居したくなる天然酵母のパン屋さんも、ベジタリアンのランチメニューやシンガポールのコーヒーを出してくれる店も、昔から地元で愛されるあんかけ焼きそばが食べられる店も、雰囲気のいいこだわりの蕎麦屋さんも、郵便局をリノベーションした太平洋の向こうのベイサイドをも感じるダイニングも、上げればきりがないほど多くの素敵な店がこの周りにはあります。

函館山にトレッキングに行くのもよし(歩かないといけない場所もたくさん)、夕方からのイルミネーションの景色の中を歩くもよし。楽しみ方はいろいろ。

 

最後にこちらの写真を紹介して、この記事を終わりにしましょう。

受付までのアプローチ。夜は足元を明かりが照らしてくれます。右手には暖炉にくべる薪。扉の向こうには函館を愛する優しいスタッフが待っていてくれます。

この宿のコンセプトは「暮らしを見つける宿」。函館という独自の歴史と風土を持つ土地に暮らす人たち、暮らしてきた人たちの、生活をちょっとおすそ分けしてもらうよなそんな気持ちになる場所です。

 


【SMALL TOWN HOSTEL】
〇電話/0138-83-8742
〇住所/函館市末広町18-25
〇予約の受付時間/10:00~12:30、15:30〜21:00
〇WEB予約/https://smalltownhostel.hakobar.com/booking.html

LOCATION

WRITER

原 大介
ライター/ディレクター

リクルートグループの制作会社で12年勤務した後、2012年に独立。現在は「北海道じゃらん」の編集・取材も担当。もう一つの仕事であるコンサル業務と合わせて、道内のあちこちを飛び回る日々。

ユアンワークス
http://yuanworks.info/