厳冬期が旬! ぬかびら源泉郷の冬コンテンツを楽しむ秘訣

 

Text & Photo / 松田 謙介

半年近く雪に閉ざされる環境に暮らす〝北海道民〟は、白い雪と厳しい寒さを決して好きなわけではありません。でも、ネガティブな気持ちだけで半年間を過ごすのはあまりにしんどい。せっかくなら、この寒さを楽しみたい! 近年、地域観光業者さんらの尽力やインバウンド旅行者の増加効果が相まって、冬の北海道の観光コンテンツが見直されています。

中標津町と別海町の間にまたがる野付半島の「氷平線」や、南十勝・豊頃町の浜辺に打ち上がる「ジュエリーアイス」、また真冬の阿寒湖に現れる氷の花「フロストフラワー」などなど……。知名度の高い流氷や雪氷イベントに加わる形で〝ややマイナー〟なコンテンツが、どんどんと脚光を浴びているのが特徴的です。

さて、今回のトラベラーズノートは北十勝へ。上士幌町に冬の魅力を探しに出かけてみました!

 

スノーシューで、雪上を自由に闊歩できるヨロコビ

支笏湖や洞爺湖、阿寒湖といった自然湖に恵まれた北海道の中で、ダム=人造湖はマイナーな存在です。しかし、糠平ダムのある上士幌町には、源泉掛け流しの「ぬかびら源泉郷」があり、静かな温泉郷に滞在しながら観光できるのがお楽しみのポイント。

帯広のホテルや音更町(おとふけちょう)の十勝川温泉から足を延ばすのもいいですが、雑音の少ない山の温泉に滞在するのは、それだけで特別な体験です。

 

ぬかびら源泉郷には、旅行者を温かく出迎えてくれるNPO「ひがし大雪自然ガイドセンター」があります。特に冬の北海道観光は、道迷いひとつが命に関わります。観光を楽しむなら、ガイドツアーに参加するのがおすすめ。

今回の目的は冬のスノーシュー体験。長靴・スノーシュー・ストックは無料でレンタルが可能です。札幌を早朝に出発し、朝9時からガイドツアーに参加しました。

音更川(おとふけがわ)の向こうにたたずむのは、ピリベツ岳と西クマネシリ岳。(上士幌ツウには)通称「おっぱい山」と呼ばれているようなのですが……。歩く先に、山が見える。それだけで心が昂ぶるし、アイキャッチとしても映えるし。とにもかくにも素敵な北十勝の風景。

 

ふわふわの新雪の上をスノーシューでゆく。ガイドさんが動物の足跡ひとつ一つを解説しながら、ゆっくりと先導してくれます。

「この足跡はキツネ、これはエゾリス、これはイイズナ……こんなにもたくさんの動物たちの間で僕たちは暮らしているんです」とガイドさん。雪のない夏場の散策ではなかなか気づくことのできない、動物たちの営み。その存在感と深みにハッとします。

 

歩き始めてしばし。糠平ダムに差し込む渓流である音更川(おとふけがわ)にたどり着きました。朝の太陽が河畔の若木を照らします。

空気中の水蒸気が夜の間に樹皮の上につき、朝の冷気がそれを細かな氷に変えます。「樹氷」は、凍てつく冬の朝だけに現れるマジックコンテンツ。思わず、写真を撮りました。

散策途中では、たくさんのフロストフラワーを目にすることができました。北海道内では阿寒湖のものが有名になっていますが、実は目を凝らせば、フロストフラワーは道内各地で見つけることができます。

フロストフラワーの発生条件は、氷点下15℃以下の環境で、水辺があり、前日〜当日朝が無風であること。小さな水たまりの雫が冷える早朝に成長し、結晶化します。足元に咲く小さな奇跡。スノーシューでゆっくりと歩いてこそ見つけられる冬の景色があるのです。

 

旧国鉄・士幌線跡が醸し出す真冬のフォトジェニック

歩くこと小一時間。目的地の旧国鉄・士幌線「十三ノ沢橋梁」に辿り着きました。現在は廃線となっている士幌線。戦時中は、上士幌の木材を帯広や広尾に運ぶ目的で重宝された路線と言われます。

橋梁に近づくと、文化庁によって登録有形文化財に選ばれた証であるエンブレムを見ることができます。音更川にはたくさんの支流が差し込んでおり、士幌線の橋梁はその〝サイズ〟に合わせてひとつ一つデザイン・施工がなされました。小さな鉄道橋ひとつずつに個性があるのが魅力的です。

参加メンバーでパチリ。橋を背景にした一枚の写真が、絵になる〜!

今回、トラベラーズノートが参加した上士幌町のネイチャーガイドツアーは12月。残念ながら、糠平ダムの湖上を散策することはできませんでしたが、厳冬期の1月下旬からは、糠平ダムの減水期に一定期間だけ浮かび上がるために「幻の橋」と呼ばれる「タウシュベツ川橋梁」を間近に見られます。

ダムの中で浮き沈みを繰り返し、徐々に風化が進んでいるので、いつ崩れるか分からないとされるタウシュベツ川橋梁は、まさに一見の価値あり! 橋の規模も他のものとは一線を画しており、冬の十勝を訪れるならぜひ見て欲しい景色です。

木の切り株が糠平ダムの水位減少と共に浮かび上がり、不思議な氷の造形となって現れます。「きのこ氷」「マッシュアイス」「クラウンアイス」と様々な愛称で呼ばれる、この氷を見られるのも真冬のお楽しみ。


 

宿泊すればもっと楽しい、ぬかびら源泉郷

スノーシューツアーを楽しむだけなら、札幌を早朝に出発すれば上士幌町の観光は満喫できますし、日帰りも可能です。

でも、せっかくなら、このエリアをディープに楽しんで欲しい。旧士幌線のスノーシューを体験するなら、トラベラーズノートはぬかびら源泉郷の宿泊をおすすめします。今回は士幌町の道の駅やスーパーマーケットで地のものを買い付け、ログハウスで自分たちで調理。北十勝の味覚を存分に楽しみました。

翌日朝は6時前に起床し、絶景として知られる三国峠(みくにとうげ)へ。十勝のサンライズをしっかりと目にしてきましたよ。糠平に泊まったからこそできる贅沢。夕方だけじゃない、朝のマジックアワーも素敵ですよね。


十勝地方は非常に広いため、冬に一日で巡り切ろうと頑張るのはかなり無謀であり、とにかく忙しい旅路になってしまいます。あくまで、欲張らずに。宿泊するベース地を落ち着いて決め、そこから50〜100㎞圏内を目安に、一日かけてゆっくりと巡るのが冬の十勝旅のベターです。

ぬかびら源泉郷、また糠平ダムは共に札幌からクルマで約5時間ほどを要します。特に冬場の道東自動車道は凍結のために速度規制がかかることが多く、移動時間が左右されがち。上士幌町の自然ガイドツアーは朝に実施されるので、心に余裕をもって臨むためにも、十勝地方に前泊するのがおすすめですよ。

大平原の片隅にひっそりと息づいている、小さな自然に目を凝らしてみてください。あなただけが見つけた北海道・冬のワンピース。それはお金ではとても勘定することのできない、その日だけのスペシャルビューなのです。


<NPO ひがし大雪自然ガイドセンター>

◯住所/北海道河東郡上士幌町ぬかびら源泉郷北区44-3 糠平温泉文化ホール内

◯電話番号/01564-4-2261

◯料金/各ガイドツアーによって料金は異なる。要問い合わせ

◯公式サイト

http://www.guidecentre.jp/index.html

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WRITER

松田謙介
ライター/編集者

釣り雑誌、旅行サイトの編集経験を活かし、北海道の「自然」の姿を受け手に伝えたいと考えるアラフォーライター。釣りや登山をはじめとした外遊び全般が好きなものの、特技はトンボ捕りとかなり地味。